千葉大学|高大連携企画室

 

   
       
                 

 



 
千葉理数教育高大連携ニュース NO.33(2010.6.16)

【1】サンノゼでのISEF2010を体験して(県立千葉高校 堀 亨)
【2】第4回高校生理科研究発表会について
【3】「千葉大学高校生対象サイエンスイベント一覧」ができあがりました
【トピックス】「スマートグリッド」に注目を
【編集後記】

 

【1】 サンノゼでのISEF2010を体験して
                                        千葉県立千葉高等学校   堀  亨

  毎年、五月にアメリカ合衆国で開催される国際学生科学技術フェア (以下、ISEF)に、千葉大学先進科学
センターからの派遣で参加させてい ただきました。元々は、昨年の同時期にネバダ州で開催されたISEF
2009 に行かせていただく予定でしたが、新型インフルエンザの影響で渡航中止 となり、今年になって改め
て声をかけていただいたもので、そのご厚意に深く感謝しております。
 現地に着くと街中の至る所にISEFの看板が出ていて、路面電車の塗装までもがISEFになっているものが
あり、毎晩パーティーもあって、最初はあまりのお祭り騒ぎに戸惑いもありましたが、地域が科学の研究を
応援していること、そして普段の生活に科学がしっかりと溶け込んでいる様子を感 じ取る事ができました。
 今回、私はISEFで日本の代表として発表するファイナリストたちと一緒の行動でした。審査終了直後の彼
らの感想は「厳しかったけど審査員が自信を持たせてくれて楽しかった」でした。とかく、その研究の問題点
を指摘しがちな日本での審査の在り方とはかなり違うという彼らの感想は、長年、高校生の科学論文の審査
をさせていただいている私には、発表者を鼓舞することの重要性など、いろいろと考えさせられる所がありま
した。
 またもう一つ参考になった事は、今回50カ国以上から集まった世界中のファイナリスト達の様子をつぶさに
観察することができたことです。何よりも心を動かされたのは、各ファイナリスト達の研究成果に対する自信
に満ちた表情と、それをしっかりと伝えようとするプレゼンテーションへの意気込みでした。全米各地からの
高校生も本当に元気一杯でしたが、同時にアジア、それも中国や台湾、そして韓国から来ていた高校生達
のエネルギーには圧倒されました。日本もうかうかしてはいられません。実際、本当にこれが高校生の研究
なのかと驚かされるようなハイレベルの研究もたくさんありましたが、一方で、毎年9月下旬に千葉大学で開
催される高校生理科研究発表会の中にも、これだったらISEFで対等に戦えるのではと思える良い研究発表
がたくさんあることも分かりました。
 あえて、そこにISEFとの違いがあるとすれば、その研究に対する良い意味でのプライドの高さと、何とかし
て自分の研究を出来るだけ多くの人たちに理解してもらおうという意識の強さの差ではないかと思います。
グローバリズムの中で、たとえ流暢な英語でなくても物怖じせずに科学という共通言語で自分の考えをアピ
ールできる、そして自ら出る杭になる勇気を持った打たれ強い人材を育成することの大切さを、今回ISEFを
体験してしみじみと感じました。

 
 

【2】第4回高校生理科研究発表会について

 私たち高大連携企画室の最大の行事である「高校生理科研究発表会」が今年4回目を迎えます
(9月25日土曜日)。
 化学部の顧問あるいは審査員として3回とも関わり、いつも生徒たちの熱意とひたむきさに感動
してきました。過去、運動部や音楽関係の顧問としてさまざまな大会に参加し、高校生のエネルギ
ーに圧倒されてきましたが、それに勝るとも劣らぬエネルギーが科学の分野でみなぎっていること
に強い感動を覚えたのです。
 たしかに研究のレベルから言えばいろいろですが、真剣な眼差しで一生懸命プレゼンする姿は
みな一様に凛々しく美しい。堀先生もおっしゃるとおり、もっともっと励まして自信を持たせ、さらなる
挑戦をしてほしいと切に願います。
 昨年は118件もの発表があり、大学主催としては質量ともトップレベルの発表会とスタッフ一同
自負しております。「こんな研究では・・・」と遠慮なさらず、ぜひ生徒たちに発表の機会を与えてほ
しいと存じます。

  【今年度ISEF参加の西田 惇さんの講演もあります】

 前号では審査時間を利用して「株式会社リバネス」の丸 幸弘氏の講演があることをお知らせし
ましたが、 http://koudai.cfs.chiba-u.ac.jp/koen2010.html 
もうひとつ、今年度ISEFに参加してトリプル受賞を果たした筑波大学理工学群工学システム学類
1年生の、西田 惇さんにも30分程度の講演をお願いすることとなりました。
 西田さんは奈良女子大学附属中等教育学校の3年次、「筋電位計測システムの開発とその応用  その2」の研究で日本代表に選ばれ、ISEFにおいてみごとグランドアワード3位、アジレント・テ
クノロジー賞、全米知的財産法協会賞のトリプル受賞に輝きました。
 当日は実際にサンノゼで行った英語でのプレゼンを交え、研究内容の解説と研究への思いを語っ
てくださいます。どうぞご期待ください。 

 
 

【3】「千葉大学高校生対象サイエンスイベント一覧」ができあがりました

  千葉大学が毎年夏休みを中心にして行っている高校生を対象にしたサイエンスイベント一覧の
リーフレットができあがりました。「科学の海」に飛び込むデザインのリーフレットです。すでに県教
育委員会を通じて各校にお届けしてあると存じます。興味のある生徒に是非ご紹介お願いいた し
ます。      http://koudai.cfs.chiba-u.ac.jp/sience_event04.htm

 
 

【トピックス】「スマートグリッド」に注目を

 2010年版の環境白書が6月1日閣議決定されました。その中に「スマートグリッドなど環境分野の技術開
発が経済発展にもつながる」という指摘があります。
 「スマートグリッド」は「賢い送電網」で、オバマ大統領の「グリーンニューディール」政策から一躍注目され
始めた言葉です。経済再生の切り札は、究極的に自然エネルギーへの大転換しかないと主張するオバマ
大統領は就任早々、スマートグリッドに1兆1千億円の予算をつぎ込むことを決定しました。
 もともとアメリカの送電網はつぎはぎだらけで停電も多く(1世帯あたり年間100分間 日本は4分間)脆弱
なのですが、その改善をすると同時に一挙に自然エネルギー対応型に変換してしまおうというのがアメリカ
の戦略です。どういうことでしょうか。
 太陽光発電や風力発電の弱点は天候で発電量が左右されてしまうことです。晴天で風の強い日に大量
に発生した電気が一気に送電網に流れ込んだら従来型の送電網では制御できません。そこでITを使って
グリッドに流れ込む電気をリアルタイムで把握し、必要とする場所に的確に配分するシステムがスマートグ
リッドというわけです。送電網自身が発電所の制御室の役割をしてしまうのです。
 アメリカの広い国土の中ではどこかで日が照り、強い風が吹いています。ここから生まれる電力を全体で
ならして効率的に使う。自然エネルギー普及にとって、スマートグリッドはなくてはならないシステムです。
 では日本はどうでしょうか?停電しても中央制御で瞬く間に復旧させてしまう優れた技術レベルから、「日
本はとっくにスマートグリッドだ」と言う企業関係者もいるそうですが、本当の意味でそうなっていないことは
明らかです(9電力会社がエリアごとに完結して機能しているためかえってスマートグリッドしにくい状況と
いう)。
 「石油+自動車」の時代は終わり、自然エネルギーへ移行するのは必然です。世界最高の省エネ技術
と自然エネルギー技術(太陽電池・リチウムイオン電池・燃料電池・風力発電・バイオマス・・・)を持ちなが
ら、政策的な失敗で後れをとるとしたらこれほど残念なことはありません。今後のスマートグリッドをめぐる
議論に注目するとともに、私たちも教育の場から大いに発言していきたいものです。

 
 

【編集後記】
 4月、初めての「トピックス」ではやぶさを記事にした直後、千葉大看護学部の酒井郁子先生より、
「ボク チキュウニ カエラナクチャ というはやぶさくんの気持ち?にぐっと来ているひとりです。無事
にオーストラリアの砂漠で回収できるといいですね」というお便りをいただき、大いに共感したもので
す。とうとう帰ってきました。私にとってはカメルーン戦の100倍の感動です。 

野曽原友行

千葉大学高大連携企画室
tel:043-290-3526
fax:043-290-3962
E-mail:t-nosohara@faculty.chiba-u.jp



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