【1】第4回高校生理科研究発表会の報告
9月25日(土)当大学西千葉キャンパス「けやき会館」において、県教育委員会との共催による「第4回高校生理科研究発表会」が開催されました。
今年度は昨年より10件増の128件の発表があり(参加者数は昨年より約70名増の約640名)会場は高校生、先生方、一般の皆様など多数の方々の熱気であふれました。昨年度に増して盛大かつ充実した形で実施できましたのも、多くの皆様方のご支援、ご協力によるものと感謝しております。この場をお借りして厚くお礼申し上げます。
発表と講演会終了後、大ホールにて表彰式がおこなわれ、特別賞5件、優秀賞30件に加え、優秀な指導者に授与される朝日新聞社千葉総局長賞が2名の先生方に贈られました。以下、特別賞と指導者賞の受賞者をご紹介いたします(優秀賞については学校名と数のみ。研究テーマとお名前は、後ほどホームページにアップしますのでご覧ください)。
最優秀賞
「巻き貝の数学的研究−化石の変形過程解明へのステップとして−」
千葉県立長生高等学校:河野 隆史
千葉大学長賞
「打楽器の癒し効果」
千葉市立千葉高等学校:柳 あすか
千葉県教育長賞
「酵母におけるキラー現象の観察」
茨城県立水戸第二高等学校:横田 奈々
千葉市長賞
「海藻を利用した濁りの浄化−PartU−」
東京都立科学技術高等学校:山下 祐司
千葉市教育長賞
「ショウジョウバエの交尾行動は本当に雌の産卵を誘引するのか」
埼玉県立浦和第一女子高等学校:石渡 知里
優秀賞(30件)
県立船橋(5) 市川(5) 県立柏中央(3) 県立長生(2)
県立柏の葉(2) 市立千葉(2) 県立東葛飾 県立柏 県立成東
県立安房 市立稲毛 中央学院 青森県立名久井 茨城県立日立第一
埼玉県立浦和東 都立戸山 逗子開成
朝日新聞社千葉総局長賞
千葉県立柏の葉高等学校 教諭 野沢 則之
市川高等学校 教諭 細谷 哲雄
千葉大学が主催する理科研究発表会の特色の一つは、入賞の有無に関わらずすべての研究発表に対し、科学研究や教育の第一線で活躍する審査委員の先生方からその研究についての審査コメントが与えられる点です。コメントはその研究の素晴らしい点、改善を要する点など、これから更にその研究を進めていく上での有益なアドバイスも沢山含まれております。 現在、事務局にて、発表された皆様に送付できるよう鋭意作業を進めているところです。
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【2】「理科課題研究ガイドブック」について
県立我孫子高校の小泉治彦先生が、千葉大学先進科学センターを発行元として出版した「理科課題研究ガイドブック」(A4版68ページ)に申し込みが殺到しています。「第4回理科研究発表会」に参加したみなさんにはその場で差し上げましたが、このニュースやHPをごらんになった全国の方々からの注文が相次ぎ(中国からの注文もありました)、現在第2版の2000部がほぼ底をついたかっこうです。
私たち出版に携わった者としては嬉しい悲鳴であり、これからの希望状況に応じては増刷を検討する必要もありますが、予算の問題もあり、今後の方針決定についてはもうしばらくお待ちください。
いずれにしても全国の理科関係の先生方が、私たちと同じように課題研究指導に大きな魅力を感じつつも、その具体的な指導計画に不安を抱えていらっしゃることがよくわかりました。小泉先生ご自身の指導経験を基に、課題研究の指導に必要な内容がたいへんわかりやすくまとめられている「ガイドブック」です。できるだけ多くの方々に広く深く活用していただけるよう、今後とも努力してまいりたいと存じます。
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【3】国際地学オリンピック・報告とお知らせ
9月末、17カ国が参加してインドネシアで行われた「第2回国際地学オリンピック」。日本からは広島、兵庫、静岡、神奈川の高校生4人が挑戦し、金1,銀3の全員メダル受賞に輝きました。
国別では第3位の成績でした。
第3回に向けての「日本地学オリンピック大会」の募集はすでに始まっています(募集11/15まで。一次予選12/19)千葉県会場は千葉大学教育学部です。詳しくは以下をご覧ください。
http://jeso.jp/ieso5th/3rdjeso/
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【トピックス】多剤耐性菌問題で細菌学会が警告
小学生のとき豆腐を使ってカビの研究をしました。豆腐が腐るときはカビは生えず、逆にカビが生えたときは腐らないことを不思議に思いましたが、のちにこれが微生物の拮抗現象であることを知り、自分の「発見」を誇らしく感じたものです。
カビは自らの繁栄のために抗生物質を放出し細菌の増殖を抑えるのですが、自身は当然その抗生物質を分解する酵素を持っています。ところが細菌の方もちゃっかりしたもので、死んだカビからそんな酵素を合成するDNAを盗んで、抗生物質が効かない身体をつくってしまうものが現れます。耐性菌の誕生です。
生きた細菌どうしも接合、形質導入、形質転換といった方法でたえず互いの遺伝子をやりとりしています
(O-157は赤痢菌を形質導入した大腸菌という説もある)。だから優れた抗生物質が開発されても、使っているうちに必ず耐性菌が出現し、薬は効かなくなってしまいます。例外はありません。ペニシリンやストレプトマイシンが大成功を収めたころは「細菌感染症はすべて克服された」と言われましたが、とんでもない誤りでした。
そしてこの夏は、帝京大学病院の「多剤耐性緑膿菌」、日本医科大学付属病院の「バンコマイシン耐性腸球菌」九州大学病院の「多剤耐性肺炎桿菌」と連続して多剤耐性菌による院内感染が問題になり、「日本細菌学会」は「医療機関で抗生物質を安易に使わないことを求める提言」を出すことを決定しました。耐性菌は「鎧甲に身を固めた武士」みたいで生きるのはかなりしんどい。だから抗生物質を使わなければたちまち身軽な「感受性菌」に戻るのだそうです。
ところで巷にあふれる「抗菌グッズ」も耐性菌蔓延の元凶であると言います。元々抗菌グッズは怪我や病気で感染しやすい人のために開発されたものであり、健康人には百害あって一利なしと言う学者もいます。なにしろ60兆個の細胞からなる私たちの身体には、100兆個もの細菌が棲みついているのですから、本来忌み嫌うべきものではないのです。 残留性のある有機系殺菌剤をしみこませた抗菌グッズや消毒薬を多用し、耐性菌を産み出すことこそが問題です。制汗剤などに使われる銀もいけないと聞きビックリしました。確かに重金属ですから残留性です。消毒には熱、日光はもちろんですが、アルコール、過酸化水素など残留性のない物質を使うのが本来のあり方なのでしょう。
養老 孟さんは、現代人にいちばん欠けてしまったのは「手入れの思想」だ、とどこかで述べておられましたが、この耐性菌問題も、科学技術文明の成果に生活のすべてをお任せしてきめ細かな「手入れの思想」を忘れてしまった現代人への警告なのかも知れません。
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【編集後記】
「初めて自分の頭で考え、自分の手で実験して発見しました」。ある生徒の喜びの感想す。自然や物質の疑問に真っ向から向き合い、ああでもない、こうでもないと迷い続けた末、「もしかしたら・・・」とひらめいた仮説が的中し、しかもそれが新しい発見であったときの喜びはひとしおです。たとえちっぽけな身近な事象ではあっても、そのような体験があってこそほんとうの理科教育であると私たちは考えています。
何はともあれ、高大連携企画室が担当する最大の行事を無事終了することができ、ホッとしているところです。この会で第4回となりましたが、過去の反省点を少しずつ生かしながら、よりよい発表会となるよう改善を図ってまいりました。今回も、私どもが気がつかない改善点があるのではないかと思います。どうぞ、お気づきの点を忌憚なくお知らせいただければ幸いです。
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野曽原友行
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