千葉大学|高大連携企画室

 

   
       
                 

 



 
千葉理数教育高大連携ニュース NO64(2013.01.15)

【1】JSTより、平成25年度のSPPならびに科学部活動振興プログラムの募集が発表されました
【2】市川高校「課題研究授業」訪問記
【編集後記】

 

【1】JSTより、平成25年度のSPPならびに科学部活動振興プログラムの募集が発表されました
  
(1)SPP(サイエンス・パートナーシップ・プログラム)
応募期間: 2013年1月11日(金)〜2013年2月14日(木)正午

  公立高校の場合、これとは別に教育委員会への報告期日が決められていますのでご注意下さい。詳しくは各学校長あて通知、および以下のウェブサイトをご覧ください。
 http://rikai.jst.go.jp/flow/

(2)中高生の科学部活動振興プログラム
 全国で積極的な活動をしている科学部活動の多くが、最も期待している支援事業です。
応募期間: 2013年1月11日(金)〜2013年2月15日(金)正午

  公立学校の場合、これとは別に教育委員会への報告期日が決められていますのでご注意下さい。また、SSHの高校は支援対象外であり、SPPとの重複採択には制限があることにもご注意ください。詳しくは各学校長あて通知、および以下のウェブサイトをご覧ください。
 http://rikai.jst.go.jp/flow/

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【2】市川高校「課題研究授業」訪問記
                                        千葉大学高大連携企画室 野曽原 友行

  1/8(火)、市川高校の課題研究授業を見学してきました。
  市川高校はSSH4年目、2年生の理科系6クラス、240名全員が課題研究を行っています。まずSSH部長の細谷 哲雄先生にお話を伺いました。
    ・・・・・・・・・・
Q:240名もの生徒が課題研究を行っていることにまず驚かされます。研究テーマ数はどのくらいになるので すか。
A:共同研究が多いので、例年70〜90テーマくらいです。2クラスずつ3日間に分けて、午後の2時間を課題 研究にあてています。
Q:しかしその時間だけでは足りませんよね。
A:はい、その日は部活動も軽減してもらっているので、放課後も続けて6時ころまで実験しているグループも 多くあります。
Q:研究テーマはいつ頃決まるのですか。
A:2年生になって5月までは基礎実習として、答が一概に決まらないような課題実験をいろいろやってもらい、 6月中に自分のテーマを決められるようにしています。その間に大学や研究所での研修にも参加し、研究の 体制作りをします。
Q:そのような短期間にテーマが決められるのは立派ですね。
A:全く新しいテーマもありますが、先輩からの引き継ぎテーマも多いのです。また最近は、課題研究指導の経 験豊かなベテランの先生が増えてきたことも力になっています。
Q:理科の先生方は何人いらっしゃるのですか。
A:常勤17人に非常勤9人でやっています。
Q:たしかに公立高校とは規模が違うのですね。生徒の研究への取り組み方はどうですか。
A:欠席はまずなく、実験も発表もとてもまじめで熱心です。だから何とかしていい結果を出させてやりたいと、 先生方も一生懸命になります。
Q:すばらしいです。わずか3ケ月余りの研究で、昨年9月の千葉大学主催の研究発表会で、物理の「ライデン フロスト」の学長賞を筆頭に4本の入賞を果たしてしまうのも、その集中力と機動力でしょうか。
A:千葉大の発表会は、いつも本学園の文化祭と重なるので、多数は参加できないのが残念です。反面、どう しても参加したい生徒にはそれなりの決意はあると思います。
Q:3年生になっても研究を続ける生徒はいるのですか?
A:少数います。そういう生徒はほとんど一流大学の推薦入試に合格しています。

・・・・というわけで早速、研究の様子を見学させてもらいました。

 火曜日は物理と化学の日。新年初めての授業にもかかわらず、生徒たちは早くも実験の準備に集中しています。
  大きなペットボトルに2つの穴を開け、流水によって発電する「ケルビン発電機」、電気量をどう測るかが課題とのこと。長い管の端にメガホン状の装置を取り付けている生徒は、開口端補正の研究です。パソコンを操作している女子3人組は、シャボン玉膜に音波を当てたときの渦の発生を研究中。細谷先生によると、非平衡状態の現象としてたいへん興味深い発見とのことです。
  化学では、まず「染料と洗剤の相性」の研究。これは昨年の千葉大の発表会で優秀賞を獲得した研究であり、女子4人の説明もなるほど自信にあふれています。超伝導、色素増感型太陽電池、鉄を除去して鮮やかなゴム状硫黄を作る研究、カフェイン抽出、水の分析、ビタミンCで化粧品を作る研究、白金を使わない燃料電池に挑戦などなど、研究対象は非常に多岐にわたっています。
 化学の研究指導の中心を担うのは、その道では知る人ぞ知る中島 哲人先生。高い測定装置は買えないので、たいていは秋葉原で調達して自作しているそうです。「なかなかすべての研究に目は届かないけれども、みんな一生懸命なので何とかしてやりたい。ひたすら実験を進めている段階から、生徒同士が議論し始める段階に進むと研究は飛躍的に進歩します」、と熱く語っていらっしゃいました。

 「 研究は楽しいですか?」の問いに一人の男子は、「今は結果が出ないので苦しいことの方が多いです。でも希望はいっぱいあります」と答えてくれました。
 市川高校は、生徒が自らを教育する「第三教育」を最も重視しているといいます。そのことを肌で感じる清々しい午後のひとときでした。
 
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【編集後記】
 
 宇宙物理学者の池内 了さんは、科学のあり方や科学教育についても積極的に提言されている方です。最近出した『科学の限界』(ちくま新書)の終章では、次のように語っています。

   「・・・世の中に役立とうというような野心を捨て、自然と戯れながら自然の偉大さを学んでいく
   科学で良いのではないだろうか。好奇心、探求心、美を求める心、想像する心、普遍性への
   あこがれ、そのような人間の感性を最大限錬磨して、人間の可能性を拡大する営みである。
   
    ・・・本当のところ市民は『役に立つ科学』ではなく、『役に立たないけれども、知的なスリルを
   味わえる科学』を求めている。市民も知的冒険をしたいのだ。それは『はやぶさ』の人気、日食
   や月食や流星群に注がれる目、ヒッグス粒子発見の騒動などを見ればわかる。そこに共通す
   る要素は 『物語』があるという点だ。科学は冷徹な真理を追い求めているのには相違ないが、
   その道筋は『物語』に満ちている」

  とかく「未来世代の夢を実現する科学」を強調しがちな私たち教師にとって傾聴すべき言葉です。そして文中の「市民」を「生徒」に読み替えたとき、「知的なスリル」「知的冒険」があって、なおかつ「冷徹な真理の追究」を通して、自分自身の「物語」を紡ぎ出せる科学の営みが「課題研究」であることに異論はないものと考えます。

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野曽原友行

千葉大学高大連携企画室
tel:043-290-3526
fax:043-290-3962
E−mail:t-nosohara@faculty.chiba-u.jp



















 
   
 
 
 
 


 
 



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