千葉大学|高大連携企画室

 

   
       
                 

 



 
千葉理数教育高大連携ニュース NO.45(2011.6.22)

【1】ISEF(国際学生科学技術フェア)に参加して
【2】「千葉サイエンススクールフェスティバル(SSフェスティバル)」のお知らせ
【3】「サイエンスイベント」のリーフレットを配布しました
【4】第5回高校生理科研究発表会(9/24(土))に是非ご参加を
【編集後記】

 

【1】ISEF(国際学生科学技術フェア)に参加して

  千葉大学先進科学センターから、今年は市川高校の細谷哲雄先生(物理)と市立千葉高校の高野 裕先生(化学)がISEFへ派遣されました(5月 ロサンゼルス)。以下、お二方に参加した感想などを書いていただきました。

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  細谷 哲雄(市川高校)
  年度初めに千葉大よりお声掛けをいただき、急遽視察に参加させていただくことになった。わが校は大きな大会で成績を残していないのに、参加してもよいのだろうか?という恥ずかしさを強く感じたが、本物を見て刺激を受けることができる絶好のチャンスを見逃すわけにもいかず、参加を決意した。
  参加させていただいて本当によかったと思う。日本最優秀の生徒達とそのご指導に当たられた先生方のお話を聞けたこと。現場の圧倒的な様子を観られたこと。世界中の高校生とともにプレゼンを楽しめたこと。自分自身そしてわが校の次の課題を明確に認識することができたこと。・・・・。得られたことは非常に大きいです。
  視察から帰ってきた翌日の授業。生徒達はロサンゼルスの様子を非常に聞きたがりました。感動の収まらぬ私は、気の赴くままに世界の高校生の姿や受賞の様子を伝えました。教室内の生徒達全員の背筋が伸びて、視線が輝くのを感じ、再度興奮を覚えました。「現場の教師に本物を見せる」という上野先生のお言葉の
意味がわかった気がします。私一人の経験を伝えることで私に関わる生徒達が少し世界に近づいていくのですね。

総じて
  日本の研究は視点の良さという点では1位になって良いものが多数である。日本チームが改善しなければいけないのは次の点である。
●定性的な考察にとどまらず、数式を使った考察をすべき。授業において数学で表現する力を高める指導をしなければならない。それに付け加え、微積、線形代数をつかえる知識があればよい。
●積極的に英語を使って打って出る力が弱い。元気さが欲しい。英語の授業、国語の授業がコミュニケーショ ンを目的としたものに変わっていかないといけないだろう。
●チームの団結が弱い。インドチームや北京チームの元気さはプレゼンの自信にもつながっていた。
●テーマがあまりにマニアックで一般人に受けるものでなかったかも知れない。それゆえ英語力が必要。
●一つの事象でも多角的な方面から分析してグラフ化する。
●自作工具を使った研究は評価を受ける。外国の生徒は信じられないような装置を自作している。
●引率教員が意外に少なく、これは生徒の精神的なバックアップが欠落する原因になり、もったいないと感じ た。
●先生を送り出す学校側の対応も改善するべきである。どんどん出張を許可すべき。

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高野 裕(市立千葉高校)
  今回、千葉大学先進科学センターからご指名をいただきISEF2011を視察するチャンスに恵まれた。この視察に参加して率直に感じたことを書き留めたい。
  まず第1に、ISEFそのものの規模の大きさと国際性の豊かさ、機能的な運営は、現在日本で行われている同様の大会に比べて全ての面でスケールの大きさを感じさせられた。さらに、このような規模で実施しながらも厳しいレギュレーションを設けこれを遵守しているところは、今後の自らの課題研究実施に際して大変参考になった。
  第2に特筆したいのは、もしかするとこれが全てかも知れないが、各国の英語力の高さである。というよりむしろ日本の英語力の低さかも知れない。中国、韓国、台湾という近隣のアジア諸国は、十分に英語でコミュニケーションがとれているのに対し、日本はプレゼンこそそつなくこなすものの、いざコミュニケーションとなると中国、韓国、台湾の足下にも及ばないという感じであった。
  このコミュニケーション能力の不足がそのまま受賞本数の違いに反映されていると言っても過言ではないだろう。私自身、この視察に参加するまでは、英語で発表するより日本語で自分の伝えたいことをしっかりと伝えることができればよいと思っていたが、ISEFを視察して自分の研究が母国語でしっかり伝えられることは当たり前で、ファイナリストとしてISEFの土俵で対等に他国と競うためにはやはり英語力が欠かせないと痛感した。
  近年、SSHにおいても国際性を最前面にうたわなければ採択が難しいと言われており、それだけではないだろうとずっと感じてきたが、この視察を終え、現在の我が国の理数教育の一つの大きな課題として高い国際性が求められることの意義が自覚できたことは大きな収穫であった。今後、この視察で得られた経験を少しでも市立千葉高校の課題研究に還元していければと考えている。
  最後に、このような機会を与えて下さった千葉大学先進科学センターの方々、この視察への参加をご支援いただいた校長をはじめとする本校職員の皆様に感謝いたします。

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【2】「千葉サイエンススクールフェスティバル(SSフェスティバル)」のお知らせ

 本年度コアSSHに採択された県立船橋高校の構想による「千葉サイエンススクールネット」の主催で、8月6日、千葉工業大学を会場として「千葉サイエンススクールフェスティバル」が開催されます。興味関心のある生徒諸君、先生方の参加をお待ちします。入場は無料です。

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目的
  科学的創造力のある人材を育成する全県的学校ネットワークシステムの構築に向けて,小中学生の興味関心を喚起して高校の取り組みにつなげ,また高校における探究活動を活性化する。

日時 平成23 年8 月6 日(土)10:30〜15:00
場所 千葉工業大学・新1 号棟
主催 千葉サイエンススクールネット
(文部科学省指定平成23 年度千葉県立船橋高等学校コアSSH)
後援 千葉県教育委員会・千葉工業大学

内容
1 科学教室
  高校生による小・中学生向け実験工作展約50 件(1 階ホール,2 階会議
  室・電子工学実験室)
2 高校生研究発表
  高校生による科学研究のポスター発表約25 件(3 階ホワイエ・廊下等)
3 講演「未来社会とロボット」
  千葉工業大学・未来ロボット技術研究センター所長古田貴之氏(3 階大教室)
4 高校・大学紹介約15 件
  理数教育の取組紹介(3 階大教室)

時程
   9:00 準備開始
  10:30 公開開始(科学教室・研究発表等)
  11:30〜12:15  講演
  15:00 公開終了

参加機関一覧
(幹事校5 校)千葉県立船橋高等学校,市川学園市川高等学校, 千葉県立長生高等学校 
         千葉県立柏高等学校,千葉市立千葉高等学校
(連携高校) 千葉県立柏の葉高等学校,千葉県立千葉高等学校,千葉県立千葉東高等学校 
        千葉県立東葛飾高等学校,千葉県立木更津高等学校ほか
(大学) 千葉工業大学,千葉大学,東邦大学,日本大学理工学部),千葉科学大学, 東京理科大学(予定)

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千葉県立船橋高等学校
  科学教育統括(SSH)部長
  千葉サイエンススクールネット(コアSSH)事務局
  理科(地学)担当
  教諭 吉田 昭彦
〒273-0002
千葉県船橋市東船橋6-1-1
TEL 047-422-2188/2189 FAX 047-426-0422
E-mail fwht0701@nifty.com

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【3】「サイエンスイベント」のリーフレットを配布しました

 「科学に飛び込め」のキャッチフレーズのもと、今年度も千葉大学では高校生対象のサイエンスイベントが数多く実施されます。これらのイベントを一覧にしたリーフレットが先日刷り上がり、県教育委員会の多大なご支援、ご協力をいただき、県内の各公立高校(一部の私立高校)に配布させていただきました。すでに目にされた方もいらっしゃることでしょう。
  ご存じのように、この度の学習指導要領改訂では理数教育の充実が盛り込まれ、課題研究が重視されることになりました。自主的に探究し、問題を解決してこそ本当の理科教育と考えるからです。
  その意味からも、この高校生のためのサイエンスイベントは、これからの理科教育の一助となることを確信します。一人でも多くの生徒たちに科学することの楽しさや素晴らしさを体感してほしいと思います。どうぞ、授業や部活動など様々な機会を通じて、積極的な参加をご指導ください。

 高大連携企画室HP http://koudai.cfs.chiba-u.ac.jp/
の「サイエンスイベント」に、より詳しい内容が掲載されています。ご覧ください。

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【4】第5回高校生理科研究発表会(9/24(土))に是非ご参加を

  私たち高大連携企画室のメイン行事である「高校生理科研究発表会」も早5回目を迎えます。この研究発表会は申し込めば誰でも発表できるし、科学関係の講演会もあり、また事後に4名の審査員からのきめ細かな研究のアドバイスを受け取れるという、なにかとハードルの高さが気になる既存の研究発表会にはないメリットがあります。第1回から着実に参加者を伸ばしている背景にはこのような手作りのきめ細かな配慮があってこそ、とスタッフ一同誇りを持って仕事をしております。

 さて、ここで課題研究がなぜ大切なのか、その意義についてもう一度考えてみたいと思います。
  新学習指導要領では課題研究が重視されるとはいえ、現実にはまだまだ一部の学校にしかなじみはありません。「授業に興味を持たせるのが精一杯でとても研究など・・・」という現場の声も聞こえてきそうです。しかしそうした事情は十分理解しながらも、あえて理科教育の理想の姿は課題研究にあるのだと、私たちは考えています。

 知識には3段階あり、これを機械になぞらえれば、@操作できること A直せること B作れること だとある哲学書にありました。そして「作れて」こそ、人はその機械をほんとうに「わかった」と言えるのだ、と。
  これを一般の学習活動に表現すれば、@理解できること A問題が解けること  B問題を探して解決できること となるでしょうか。課題研究がBに当たることは言うまでもありません。

 「初めて自分の頭で考え自分の手で実験して発見しました」。昨年の発表会での、ある生徒の喜びの感想です。自然や物質の疑問に真っ向から向き合い、ああでもない、こうでもないと迷い続けた末、「もしかしたら・・・」とひらめいた仮説が的中し、しかもそれが新しい発見であったときの喜びはひとしおです。
たとえちっぽけな身近な事象ではあっても、そのような体験を重ねてこそ本当の理科教育であると私たちは考えています。

 さらに言うなら、課題研究によって培われた思考力、実行力、表現力は「問題は解決できる」という自信に結びつきます。ひいては「世の中は私たちの希望と努力によって、よりよく変えることができる」という信念の、自立した市民を育てることにつながる。これこそ今、日本の教育に最も求められていることではないでしょうか。私たちは、究極的に課題研究の意義をそのようにとらえています。
  どうぞ今年も(今年こそ)、是非「高校生理科研究発表会」にご参加ください。

内容・募集要項等は以下をご覧ください。
http://koudai.cfs.chiba-u.ac.jp/society23.htm

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【編集後記】

 課題研究の指導では、具体的な「もの」を目の前にして、問題が具体的になればなるほど、生徒と私たちの差は縮まって行きます。いやむしろ何百回も実験を繰り返し、その実験のことなら世界中の誰よりも詳しくなった生徒たちには太刀打ちできないことも多いのです。

 今まで獲得した知識などなんと空しいものだろうか、と思い知らされ、正直悔しさを感じながらも、なお生徒を導いてゆく。その体験によって私たち教師も鍛えられるのだと思います。昨年亡くなった課題研究指導の大家、盛口 襄先生の口癖は「理科教師は教育者であると同時に科学者であれ」でした。課題研究は生徒のためだけでなく、私たち教師にとって大きな成長の場であることを忘れてはなりません。
 
  「いかにわかりやすく 楽しく教えるか?」こうした日常の授業の工夫は、課題研究指導にもそのまま生きてくるものなのです。できるだけたくさんの理科の先生方が「課題研究」に飛び込み、生徒と一緒にその醍醐味を実感してほしいと願います。
 
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野曽原友行

千葉大学高大連携企画室
tel:043-290-3526
fax:043-290-3962
E−mail:t-nosohara@faculty.chiba-u.jp

 

 
   
 
 
 
 


 
 



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