千葉大学|高大連携企画室

 

   
       
                 

 



 
千葉理数教育高大連携ニュース NO68(2013.05.20)

【1】ISEFにて県立千葉高校 田中 堯さんが日本人初の部門最優秀賞
【2】第2回「課題研究徹底討論講座」(千葉SSネットトップセミナー)を実施して
【3】千葉大学主催「高校生理科研究発表会」の応募方法が変わります
【4】千葉大学関連の「サイエンスイベント」が決まりました
【特別寄稿】学力世界一、フィンランドの教育を視察して(小泉治彦)
【編集後記】

 

【1】ISEF 県立千葉高校 田中 堯さんが日本人初の部門最優秀賞

 日本時間5/17(金)アリゾナ州フェニックスで開催されているISEF(国際学生科学技術フェア)において、日本代表の田中 堯さん(県立千葉高等学校2年)の「微小貝は古環境指標として有用か〜千葉県市原市瀬又
から産出した微小貝化石について〜」の研究で、地球惑星科学部門1等賞を受賞。さらに日本人初の部門最優秀賞に輝きました。田中さんは昨年の千葉大学主催「高校生理科研究発表会」にて優秀賞を受賞しています。詳しくは以下のウェブサイトをご覧ください。
http://isef.jp/news/2013/05/intel-isef-2013-4.html
 なおISEFには、同じく「高校生理科研究発表会」にて最優秀賞を受賞した、渋谷教育学園幕張高校卒の北折 暁さんも出場しています(化学部門 「懸濁液膜生成とその性質」)。千葉大での研究発表会で自信をつけた生徒の皆さんが、このように世界的に活躍する姿を見るのはたいへん嬉しいことです。

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【2】第2回「課題研究徹底討論講座」(千葉SSネットトップセミナー)を実施して

 千葉SSネット(コアSSH)として行う少数参加の徹底討論講座が、4/27((土)県立船橋高校にて開催されました。以下、千葉SSネット事務局吉田 昭彦先生(県立船橋高校)からの報告です。

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化学分科会14:00〜17:30
講師:野曽原友行先生(千葉大学高大連携専門部会)
(1)金属触媒の工夫による燃料電池の性能向上(安房高校2・3年生)
(2)ヨウ素PVA溶液の研究(県立船橋高校3年生)
(3)錯体の機能発現(市立千葉高校2年生)
(4)ふっくら美味しいホットケーキを作る(安房高校2・3年生)
(5)リコピンの研究(千葉東高校2年生)
(6)色素増感太陽電池(市立千葉高校2年生)

生物分科会14:00〜16:30
講師:町田武生先生(埼玉大学名誉教授)
(1)千葉ポートパークの生き物調査(千葉東高校2・3年生)
(2)ワサビの部位別の抗菌効果(市川高校3年生)
(3)原形質分離の溶液による違い(県立船橋高校2年生)
(4)アルテミアと塩分濃度の関係性(千葉東高校2年生)

  昨年同様、時間をかけた討論により、研究を一層発展させる機会を提供することをねらいとしました。昨年度の3校5件に対し、今年度は5校10件と参加の幅が広がりました。ただ、参加を想定していた3年生が少なかったこと、化学・生物の2分野にとどまったことはやや残念でした。今後も課題研究を推進する企画を実施する予定ですので、ご意見・感想等ありましたら、是非お寄せ下さい。

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千葉県立船橋高等学校
千葉サイエンススクールネット(コアSSH)事務局
教諭 吉田 昭彦

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【3】千葉大学主催「高校生理科研究発表会」の応募方法が変わります

 今年第7回を迎える千葉大学主催「高校生理科研究発表会」は、9/28(土)、昨年と同じく千葉大学西千葉キャンパスの教育学部を中心とする会場で開催されます。
 そして第6回までとは応募方法が変わりますのでご注意ください。具体的には、主催者が用意したエクセルの「応募フォーム」に記入していただく方法への変更です。
 詳しくは6月上旬に掲載される以下のウェブサイトをご覧ください。
http://koudai.cfs.chiba-u.ac.jp/

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【4】千葉大学関連の「サイエンスイベント」が決まりました

 千葉大学の先生方が開催する高校生対象の、今年の「サイエンスイベント」がほぼ決まりました。まだ募集要項のURLが完成していない講座もありますが、決まり次第掲載していきます。
 以下のウェブサイトをご覧ください。
http://koudai.cfs.chiba-u.ac.jp/science%20event/sience_event07.htm

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【特別寄稿】学力世界一、フィンランドの教育を視察して〜後編〜
                                        千葉県立我孫子高校 小泉 治彦

3.考える生徒を育てる教育

●考えることを重視した教科横断型授業
  子どもたちは、小さい頃から森の中で葉っぱやきのこを観察し、不思議なことや面白いことを見つけていきます。「ミクシ(なぜ)?」という疑問を大事にして、先生は答えを教えません。小学校の理科は生物分野が主体となっており、多様で複雑な自然の中から面白さや規則性を見つけ出していくことが求められます。また、算数の教科書の例題に都市間の距離の足し算が出てきたり、グラフを描くのに美術とコラボしたりするなど、教科横断型の内容となっています。数学や理科でも文章で答えさせることがよくあります。音楽・美術は表現力を養うという観点から重視されています。グループでの話し合いもよく行われ、教え合い、聞きあいながら学習を進めます。
●進んだICT教育
  教室の天井にはプロジェクターが完備され、教科書会社から提供されるソフトや実物投影機を使って授業が進みます。廊下にもコンピュータが置かれ、誰でも自由に使えます。情報機器を使いこなし、自分の考えを広げてまとめる力をつけることが求められています。生徒の出欠・成績管理や、家庭との情報共有にもICTが活用されています。
  「憶える」のではなく「考える」力をつけること。勉強の内容(範囲)は決まっているのではなく、自分が興味を持って調べたことが自分の知識になるという知識観。勉強の仕方を学び、自分で学ぶ態度をつけながら学力を伸ばしていくためのサポート体制ができ上がっているといえるでしょう。
●中学校までは、ほとんどテストがない
  小学校・中学校では授業中の確認テストなどはありますが、定期考査はありません。順位をつけ、他人と比較することは意味がないと考えているのです。大事なのは自分がどれだけ理解できたかどうかということです。
成績の評価は、作品や発表、授業態度などをもとにつけられます。授業では、特に形成的評価を大切にしており、子どもたちが学習へのモチベーションを保ち、意欲的に課題と向き合えるようにするための手段として活用
されています。また、他人に伝える技術や表現の仕方も重要です。結局、覚えることが勉強なのではなく、自分から興味を持って学んだことがその子どもの学力になると考えているのです。
●“自分の将来のために何が必要か”を自分で考える
  フィンランドでは、基本的に学校の先生は進路指導には関わりません。両親や友達と話し合いながら、将来自分が社会に出て何が必要なのかを考え、自分の将来について自分で決めていくのです。授業を受けるのも、そのために必要な知識や資格を得るためなのです。
  大学の数は限られているので、親元を離れて暮らすのが当たり前です。子どもたちは、社会で自立するために学んでいます。また、社会人となってからも学び続ける、“生涯学習”という考え方が浸透しています。

4.「社会で生きる学力」を伸ばすために

●覚えているだけではだめ
  PISAで日本が得点を伸ばせなかった「読解力」ですが、フィンランド(および他の諸国)では文章に何が書いてあるかを読み取って解釈することを前提として、自分の意見を書くことも普通の授業の中で重視されています。自分の考えを持ち、それをどのように表現して他の人に伝えるか。それが国語はもちろん、社会科や理科などすべての教科の学習で大事な要素となっています。フィンランドの授業で生徒の手が自然にどんどん挙がって意見が出るのは、そうした学習の積み重ねがあるからでしょう。
●社会構成主義にもとづく学力観
  フィンランドでは、知識というものは「自ら学ぶ者が事実を分析・探究して、自分なりに作り上げていくものだ」と考えられています。このような知識観を“構成主義”と呼びます。さらに、「教え合い、学び合う中で“共同の知”とも呼べるより良質な知が作られる」と考えます(社会構成主義)。つまり、その人が文脈の中で理解したものが知識となるのであり、他の人との関わり合い(異質な集団でのグループ学習)の中で、より高い知識が形成されると考えるのです。
  それに対して、日本では「知識は主体の活動とは無関係に、学問の論理で体系化されて存在して」おり、「その知識の体系を順々に、計画的に、効率よく教え込んでいく」ことが教育だと考えられています。この考え方
に基づいた教育では、多くの生徒に効率的に教えることはできますが、知識や技能の伝達が教育の目的になってしまいます。そして生徒は唯一正しい知識が存在すると錯覚し、それを暗記することが学習であると思い込んでしまいます。当然、それに失敗した生徒は「落ちこぼれ」として、勉強する意欲を失っていくのです。
●日本が学ぶべきもの
  もちろん、日本とフィンランドでは歴史も風土も文化も違います。フィンランドのやり方をそのまま日本に持ってきても、うまくいくとは思えません。しかし、今の日本における勉強する意味が見出せない中高校生、就活で苦しむ学生などを見るにつけ、日本がフィンランドに学ぶべきことは多いと思われます。
  教員として、まずは一方的に教えるのではなく、常に「なぜ?」と理由を考える態度を大事にすること、課題研究や探究的授業の導入、グループ学習を取り入れ、どんどん発表させることなど、工夫次第では生徒たちの意識を変えていくことができると考えます。その一方で、今回の海外研修では授業の進め方や教員同士の授業研究など、日本の教育が世界に誇るべき高い水準にあることも再認識できました。日本の良さを生かしつつ、広い視野を持って外国の良い所を取り入れていく努力をしていくことが求められると思います。
  これまでの報告をお読みくださり、ありがとうございました。     

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【編集後記】

  要人警護のSPたちは、通る予定の道を何度も繰り返し歩いて、その道路の印象を身体に刷り込む。すると、実際の警護でその道を走っているとき、はっと胸を突かれることが起こる、ないはずのものがあったり、ある
はずのものがなかったりする。そのときアラームが鳴動し高い確率で「待ち伏せ」を察知できるのだという。
  ひるがえって科学では、そのような「うまく説明できないもの」を「許容範囲の反証事例」として無視してしまうことが往々にしてある。ほんとうは「うまく説明できないもの」であればあるほど「それを説明できる仮説」は絞り込まれ、大発見につながるかも知れないのに・・・・・。

  以上は、内田 樹さんの「街場の読書論」(太田出版)からの引用(要点のみ)ですが、これは前回紹介した山中伸弥さんの言う「全く思いもかけなかったヘンな顔を、自然は見せてくれる。そのヘンなことをきちんと受けとめ、追い求めていけばひとりでに独創的な次のステップへ行ける」という指摘と共通します。

  この「うまく説明できないもの」「ヘンな顔」をもとに、一段飛躍して説明可能な仮説を引っ張り出すことを「アブダクション」(誘拐)と言います。熟練したSP同様、経験に経験を重ね、その実験や観察のことなら「見る目が違う人」になれれば、生徒たちにもアブダクションのチャンスはきっとやってくるでしょう。先日の「SSネットトップセミナー」のまとめでは、そんなお話をしました。

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野曽原友行

千葉大学高大連携専門部会
tel:043-290-3526
fax:043-290-3962
E−mail:t-nosohara@faculty.chiba-u.jp






















 
   
 
 
 
 


 
 



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