千葉理数教育高大連携ニュース
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千葉理数教育高大連携ニュース NO119(2017.08.01)

【1】「第11回 高校生理科研究発表会」の受付開始

 「第11回 高校生理科研究発表会」の受付が、8月21日(月)からいよいよ開始されます。
 申し込み方法等の詳細や発表会の日程等につきましては、高大連携ニュースでもご案内いたしましたが、再度概略を掲載いたします。

日時

2017年9月30日(土)
9:00~17:00(予定)

会場

千葉大学西千葉キャンパス(千葉市稲毛区弥生町1-33)
体育施設(体育館)を中心に開催します。

プログラム

8:30 ~ 9:00 発表会場で受け付け、ポスター掲示など各自の発表準備
9:00 ~ 11:00 「グループA」のポスター発表
11:00 ~ 11:50 昼食・休憩
11:50 ~ 13:50 「グループB」のポスター発表
13:50 ~ 14:10 表彰式会場へ移動
14:10 ~ 15:30 講演
15:30 ~ 16:40 表彰式・講評・特別賞受賞者写真撮影

「募集要項」は以下のウェブサイトをご覧ください。
高校生理科研究発表会 募集要項
http://www.cfs.chiba-u.jp/koudai/

【2】「第11回 高校生理科研究発表会」の講演者及び講演内容の概略(2)

題目 Development of Advanced Synthetic Aperture Radar onboard Microsatellite for Global Environment and Land Deformation
「グローバル環境・地殻変動観測用先端合成開口レーダ搭載小型衛星の開発」
講演者 Prof Josaphat Tetuko Sri Sumantyo, Center for Environmental Remote Sensing, Chiba University
千葉大学 環境リモートセンシング研究センター 教授 ヨサファット テトォコ スリ スマンティヨ 先生
内容

This lecture introduces the development of our original circularly polarized synthetic aperture radar (CP-SAR) onboard microsatellite (Microsatellite SAR) that developed in Center for Environmental Remote Sensing, Chiba University. This microsatellite SAR has mission to observe global environment and land deformation in the future. Synthetic Aperture Radar (SAR) employs microwave that could penetrate cloud, haze and fog, therefore it could be operated in all weather. This sensor is active sensor, hence it also could be operated in night time. In this lecture, the history of advanced Spaceborne SAR development in Chiba University and the passion of Prof Josaphat in development of this Microsatellite SAR as his dream since five years old and a promise to his father to realize the radar system and aircraft, will be introduced. This lecture also will introduce the development of SAR system (L, C, and X bands) for unmanned aerial vehicle (UAV) and aircraft; and large scale UAV (JX series). Some applications of SAR sensor for disaster monitoring, as landslide, urban environment change, volcanic activity, land subsidence, will be showed too. Prof Josaphat will give advices to be World level researcher with strong passion in research and education, based on his experience.

 この講義では、千葉大学環境リモートセンシング研究センターが独自に開発した円偏波合成開口レーダ(CP-SAR)搭載小型衛星(小型SAR衛星)を紹介します。この小型SAR衛星のミッションはグローバル環境・地殻変動を観測することです。合成開口レーダ(SAR)とはマイクロ波という雲、霧、煙を透過する電磁波を使用して、晴天はもちろん曇りや雨等どのような天候でも運用することができるレーダです。このSARセンサは能動型センサで、夜間でも観測することができます。この講義では、千葉大学で開発された先端宇宙用SARセンサをはじめ、ヨサファット教授の小型SAR衛星の開発に対する情熱、例えば5歳のときに自分で飛行機とレーダをつくる約束を父としたことなどを含め紹介します。この講義でも、千葉大学で開発された無人航空機(UAV)・航空機搭載用SARシステム(L、C、Xバンド(周波数))や、大型無人航空機(JXシリーズ)も紹介します。また、土砂崩れ、都市環境変化、火山噴火、地盤沈下などSARセンサによる監視事例も紹介します。最後に、ヨサファット教授の経験をもとに、どのようにして研究と教育に強い情熱を持ち続け世界レベルの研究者になるかアドバイスをします。

題目 「ISEFから見えてくるサイエンスの潮流」
講演者 市川学園市川高等学校 教諭 長山定正 先生
内容  サイエンスには時代の潮流がある。その時々で流行っている分野のことである。例えば、私は専門が生物なので、その分野の話をさせてもらうと、まず、大学に入り遺伝子組換え技術の存在を知った。すごい技術が登場したものだと、感動したものである。しばらくするとPCR法が流行り、どの研究室もサーマルサイクラーがフル活動、といった風であった。同時期に、バイオインフォマティクスという言葉をよく聞くようになった。今や生物学の主流はビッグデータであり、プログラミングは生物学者には必須である。さらに、ここ数年のホットなテーマはゲノム編集である、5年単位で新しい技術が開発され、技術がその時代の主流を作り出しているといっても過言ではない。
 さて、この度ISEF2017を視察する機会を頂いた。感じたことは多かったが、一番は世界におけるサイエンスの潮流と、日本におけるそれには大きな隔たりがあるということである。
 ISEFでは、ファイナリストのプロジェクトは22のカテゴリーに分けられる。各分野の専門家が、公正に審査するためである。例えば、機械工学、エネルギー化学、地球惑星科学、微生物学などである。今回、全1447プロジェクト(長山調べ)のうち、エントリー数が多かったベスト3は、地球環境科学、環境エネルギー、組込みシステム(電子回路やIoTなど)であった。いわゆる高校の科目別で分けると、生物、物理、化学の順。日本の理系高校生が、大学受験で選択する科目とまったく逆の傾向となっていることが面白い。
 また、これまでISEFで、日本が一度も賞をとったことのない分野がある。それは医学分野である。これはもちろん、日本において高校生が医学研究をすることは、システムとして確立していないからである。一方、アメリカでは、医学に興味のある優秀な高校生を、病院や研究所で受け入れ、研究させる体制が整っているという。現にここ7年のうち、4回はその分野でアメリカの高校生がThe Gordon E. Moore Award(最優秀賞)を受賞している。日米のサイエンス教育に対する違いは、大変興味深い。
 ISEFは科学のオリンピックであるから、現在のサイエンスの流行りとエントリー数には相関があるだろう。世界では、環境・医学・IT研究が主流であるのに対し、日本では動物科学や機械工学が多い。どちらが良い、悪いという問題ではない。日本は日本の良さがあり、それを追求していけば良いのかもしれない。しかし、本当は医学研究をしたいのにできない、本当はやりたい研究があるのに受験とは無関係だから…などの理由で、あきらめている高校生は少なくないのではないか。もし、そうだとしたら課題研究の指導に身をおいている一人として、歯がゆい思いをせずにはいられない。
 以上、「ISEFから見えてくるサイエンスの潮流」をメインに、お話ししてみたいと思う。

【トピック】千葉県にもある太古の火山活動の痕跡かも?

 千葉県では珍しい硫黄温泉などを探してみました。太古の火山活動の痕跡かもしれません。実際に現地に行って温泉につかりながら、遥か悠久の昔から続く活動的な地球の営みに思いを馳せてみるのも良いのではないでしょうか。

千倉温泉、南房総市千倉町
元湯白浜温泉、南房総市白浜町
七里川温泉、君津市黄和田畑
白岩温泉、鴨川市四方木
豊英温泉、君津市豊英
濃溝温泉、君津市笹
粟斗温泉、鴨川市粟斗
曽呂温泉、鴨川市仲町
岩婦温泉、南房総市高崎
弁天温泉、南房総市小浦

枕状溶岩、鴨川市(鴨川青年の家付近)、
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/p431-069.html

鴨川鉱山(ニッケル)、鴨川市(鴨川青年の家付近)、
https://blogs.yahoo.co.jp/jinosan064/14558232.html

シロウリガイ化石露頭、南房総市白浜町、
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/p431-070.html

古銅輝石安山岩、銚子市、
http://www.choshi-geopark.jp/geo_area_kurohae.html

【編集後記】

 寒い冬の日、陽射しが花瓶に当たり教室の壁に影を作っていた。授業に疲れた生徒を一休みさせようと、手を花瓶に近づけ、その影と花瓶の影が近づき合体する様子を見せた。よく見ると二つの影が近づくにしたがって花瓶の方から影が伸びてくるのがわかる。その様なことはいつでも起こるわけではなく花瓶と手の位置関係によっては、手の方から影が伸びることも、逆に影が退くように見えることさえある。条件を変えながら、不思議ですね、なぜでしょうか、と言いながら実験をして見せた。しかし、中には、何が不思議なのか、先生は何を言おうとしているのか、全く気づかない生徒も、詳しい説明をしてくれるのを待っている様子の生徒もいた。
 そうして現象の物理的説明を一切しないまま授業を終えた。この歯切れの悪い授業が生徒の心の中にいつまでも残りいつしか、なぜそのような現象が起こるのかを自分で考え謎を解いてくれることを願いながら。

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