高校生理科研究発表会
Event

第7回 高校生理科研究発表会 講演内容

題目 「役に立つ研究と役に立たない研究」
講演者 東京大学大学院理学系研究科教授  鍵 裕之(かぎ ひろゆき) 先生
内容

 東京大学理学部化学科卒業後、同大学院に進学し、博士課程を中途退学して、筑波大学物質工学系助手に着任。ニューヨーク州立大学研究員を経て、東京大学大学院理学系研究科に転任。2010年より現職。

博士論文では、隕石衝突説や放射線照射説などさまざまな成因論が報告されている天然多結晶ダイヤモンド(カルボナド)の起源解明に取り組んだ。現在は、地殻化学実験施設(Geochemical Research Center)で地球深部物質や高圧下での物質の振る舞いなどをテーマとして研究をしている。大学では化学科と地学科の講義を担当。

 大学で行われている研究にもいろいろなものがある。病気を治す薬を開発したり、これまでなかったような性質を持つ新材料を開発するなど、私たちの生活を豊かにするような研究が盛んに行われている。一方、ヒッグス粒子の発見や新元素の合成など、直接すぐには我々の役には立たない研究も大学(特に理学部)では行われている。我々の生活を直接的には豊かにしない研究も、これまで人類がわからなかった(知らなかった)ことがわかる、という意味で、我々の「心」を豊かにしてくれるに違いない。

 我々の研究グループが力を入れている研究は、地球や惑星の深部に水や水素がどのような形(構造)で取り込まれているか?という問題である。地球の原料となった物質(隕石)には多くの水が含まれているが、現在の地球の海水の量は、地球誕生時から比べると1/100程度しかない。私が学生の頃までは、地球が進化する高温の過程で地球外へ揮発してなくなったと考えられてきたが、現在は地球深部に海の何倍にも相当する水が取り込まれうると考えられている。我々は新しい大規模な測定装置を建設し、この謎を解くことを目標にして研究を進めている。我々の研究は明日の生活を豊かにするとは到底思えないが、人類の心を豊かにすることになるだろう。

 講演では私たちの研究も紹介しながら、大学で行われている研究についてお話ししたい。

題目 「Let's challenge the ISEF  アイセフを目指そう」 ~ISEF2013視察報告~
講演者 千葉県立長生高校 教諭     橋本 稔克 先生
千葉県立千葉東高校 教諭    北川 輝洋 先生
内容

SSHのどこが素晴らしいかを語ります。

70以上の国と地域からの若手研究者が一堂に会し、1200を超えるポスター発表が行われた"Intel ISEF 2013 in Phoenix”。賞金総額は300万ドル。我々はJSEC派遣団に同行し、国際学生科学フェアの様子を視察してきました。

高校生の研究に対する熱意、研究内容、交流の様子、各種イベント等を紹介し、ISEFの魅力を伝えたいと思います。

この講演では、私たち川高の教師がSSHで生徒がどう成長することを夢みているか、そもそもSSHがめざす、最先端を見る、研究者を知る、研究する、殻を壊し先へ進む、人に伝える、世界を見る、とはどういうことか、その先に何が見えるかをお話しします。

講師紹介

千葉県立長生高等学校 橋本 稔克(はしもと よりかつ)

 大学院修了後、千葉県の公立高校の教職に就く。昨年度、千葉東高等学校から長生高等学校に異動して現在に至る。担当教科は理科(物理)。物性物理学を専門とし、大学院での研究テーマは「放射光を利用したX線異常分散」。授業では、自作プリントを用い、発展的内容もわかりやすく指導するよう心がけている。

千葉県立千葉東高等学校 北川 輝洋(きたがわ てるひろ)

 大学院修了後、千葉県の公立高校に勤務し、県立千葉東高等学校に異動して現在に至る(3年目)。担当教科は理科(化学)で、学生時代は有機合成化学を専門に研究してきた。化学部の顧問として課題研究の指導に取り組み、最近は部員に影響されて、クスノキ・バナナ・トマトなどからとれる天然物化合物ついて興味を持ち、自らも研究している。

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