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世界から注目される最先端研究

宇宙物理学

“重力レンズ” で次々と観測される、宇宙の果てのできごと

アインシュタイン・リング

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた「アインシュタイン・リング」。対象となる光源が重力レンズの真後ろにあると、リング状の像ができる。(Credit: ESA/Hubble Et NASA)

大栗真宗教授

大栗 真宗

千葉大学 先進科学センター 教授

2004年、東京大学大学院で博士号取得(理学)。プリンストン大学天体物理学教室、スタンフォード大学カブリ素粒子天文学・宇宙論研究所の博士研究員、東京大学大学院理学系研究科助教等を経て、2022年2月より現職。宇宙論と宇宙の構造形成、特にダークマターやダークエネルギーに関連した研究を行う。

宇宙は138億年前、ビッグバンと呼ばれる大爆発とともに誕生し、とてつもない速さで広がり続けています。拡大する宇宙の果てには、誕生したころの宇宙の様子を知るカギがあるはず。私たちの国際研究グループは、“重力レンズ効果” を利用して、遠方の宇宙の様子を探り、宇宙誕生の秘密の解明に取り組んでいます。
“重力レンズ効果” とは、アインシュタインの一般相対性理論から導き出される現象で、宇宙空間にある銀河団などの重力によって時空が歪み、本来まっすぐ進むはずの光の経路が曲がり、一つの対象物が、複数の像となって見えたり、光源が円弧状に見えたりする効果のことを言います。リング状になったものを「アインシュタイン・リング」と言います。重力レンズによってとらえた複数の光は、それぞれ異なった経路を通ってきていますから、到達までにかかる時間も違います。その時間差を利用して、宇宙の膨張の速度を計算したり、重力レンズ効果をもたらしている物体の質量を逆算することもできます。
重力レンズには光を増幅するという特性もあるので、より遠方にある光源を観測することも可能です。私たちの国際研究グループはこの効果を利用して、地球から129億光年も離れた単独の星を発見しました。これは、現時点で、地球から最も離れた星の観測で、宇宙誕生からわずか9億年後の宇宙初期の星の様子を捉えているということになります。
重力レンズ効果の源は、巨大な質量を持つブラックホールや銀河集団、そして宇宙の3割を占める「ダークマター」が関係していると考えられています。重力レンズの現象を観測することで、いまだに得体のしれないダークマターの正体を突き止め、宇宙の起源を解明することが私たちの目標でもあります。
日本が誇るすばる望遠鏡、NASA が打ち上げたジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡、地球規模で取り組むイベントホライズンテレスコープなど、観測設備の精度は飛躍的に進歩しています。これらの施設が観測したデータの多くは一般に公開されており、だれでも活用することができます。
誤解を恐れずに言えば、私たち宇宙物理学者にとって、宇宙は遊び場。無限の可能性を秘めた発見の場であり、みなさんが夢中になれるテーマと、やりがいのある研究環境が整ってきている分野と言えるかも知れません。

2115億光年先の超新星爆発

115億光年先の超新星爆発。重力レンズ効果で3つに分裂して観測された。到達時間のずれがあるので、時間とともに温度が低下していることも分かった。(Credit: NASA/ESA/HST Frontier Fields/W.Chen et al.)

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡

ジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡。最新鋭の観測機器による観測データを活用できるところも、宇宙物理学の魅力。(Credit: NASA/Chris Gunn)

指導の様子

千葉大学では、先進科学プログラム生を指導し、宇宙の魅力を伝える。観測系の研究者との連携により、世界規模で共同研究を行っている。

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