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ナノバイオロジー ― 科学者、研究者の近道 ―

生物分子モーター研究室

原形質流動の速度を変化させて、植物の成長をコントロールする技術を開発

植物細胞における原形質流動植物細胞における原形質流動

伊藤 光二

千葉大学大学院
理学研究院 教授

1994年 名古屋大学大学院理学研究科 生物学専攻博士課程満了。1995年 同博士。産業技術総合研究所を経て、1998年千葉大学理学部に助手として着任し、講師、准教 授を経て、2016年から現職。


原形質流動-200 年の謎を解明

植物の細胞は動物の細胞に比べて大きく、細胞外から取り込んだ栄養物を単純拡散のみで細胞内にいきわたらせるには時間がかかります。一 方、植物の細胞の内部にある原形質が動く「原形質流動」の存在は、今から200 年も昔から知られていましたが、それが何のためにおこなわれているのかは大きな謎でした。  原形質流動は、「モータータンパク質」と呼ばれるミオシンXI がオルガネラ(細胞小 器官)を結合した状態でアクチン繊維上を運動することで引き起こされ、物質の拡散を促進させています(図1)。そこで、ミオシンXIのモーター領域を他のミオシンのモーター領域に代替することにより速度を改変した「速度改変型キメラミオシンXI遺伝子」を作製し、モデル植物のシロイヌナズナに導入(図2)。すると、高速型キメラミオシンXIを導入したときは原形質流動速度が増加し、シロイヌナズナの成長が促 進され、地上部の植物体のサイズが大きく、逆に、低速型キメラミオシンXIを導入したときは原形質流動速度が減少し、地上部の植物体のサイズが小さくなったのです。この結果は、原形質流動の役割が植物細胞、植物体の大きさの制御であることを示唆しています。今後も研究を進め、原形質流動機構の解明のみならずバイオマス資源や食料などの増産にも寄与したいと考えています。

速度改変型キメラミオシン。シロイヌナズナミオシンのモーター領域を高速型ミオシンまたは低 速型ミオシンのモーター領域に遺伝子工学的に置換したミオシンを作製した。高速型ミオシン、低速型ミオシンそれぞれはシロイヌナズナ細胞内でオルガネラを結合して高速または低速で運動する。その結果、原形質流動速度が高速または低速になる

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