千葉大、東大、ピッツバーグ大、ハワイ大を経て、インディアナ大の言語学研究者に
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田中 望さん
インディアナ大学グローバル国際学部テニュアトラック助教。
プロフィール
2005年、人間探究コースに飛び入学。3つの大学院を経て現職。専門は言語学
なぜ、「飛び入学」に?
フィリピンで生まれ、中学校までを多言語環境で育ちました。高校は日本の公立高校に入学し、普通に受験するつもりでいましたが、日本での高校生活になじめない私の様子を見て両親が勧めてくれたのが千葉大の飛び入学です。高校卒業後に進学を考えていた大学もあったのですが、飛び入学は受験のチャンスが増えるだけで失うものはないと考え、トライしてみることにしました。受験のために大学を訪れて、他の受験生や先生方と接するうちに、先進科学プログラムの魅力を感じ、ここで学びたいという気持ちが強くなりました。
先進科学プログラムについて
文理融合分野で学びたいと考えていたので「人間探究コース」に入学。先進科学プログラムでの生活を思い返して浮かんでくるのは学生室やセミナーです。専用の勉強場所や先進生だけのセミナーを通して先輩とも同期とも(そして後には後輩とも)触れ合う機会があったこと、学びのコミュニティを作るという点では魅力的で、千葉大というマンモス校の中で居場所がある安心感がありました。個性的な人も多かったですが、それが逆に心地よかったですし、困ったことや疑問があればみんな進んで助けてくれました。
教授との距離が近かったのも魅力的で、面接のときのことを覚えている先生も多く、入学すぐに奨学金に応募したときに推薦状を書いていただくなどお世話になりました。研究室が決まるより先に、学部1、2年生の早い時期から少人数セミナーや早期研究の機会を通して学科の先生や先進の先生と触れ合えたのはとても貴重で、そのおかげで、自分の興味を発展させることができました。初の学会発表をさせていただいたのも学部生の頃でしたし、大学院進学のときにも、英語の志願書を見ていただいたり、推薦状を書いていただくなど、いろいろな先生にお世話になりました。特に、自分が教鞭に立つ側になって、大学院生と比べてやっぱり学部生との距離は遠いと感じるので、あらためて本当にすごいことだなと思います。
そしてもちろん、学部在学中の海外への留学経験も、私にとってはその後の人生を変える大きなきっかけとなりました。フィリピン生まれの私にとって、日本の大学で学ぶことがすでに「留学」のようなものでしたので、さらに外国に行くことは考えてもいませんでした。しかし、サンノゼ州立大学での研修に参加し、現地の授業を聴講して積極的に発言する学生を見ておおいに刺激を受けました。現地の先生方と親しくさせていただき、3年次には大学院の下見も兼ねて現地を再訪。このような経験を通してアメリカがぐっと近くなり、アメリカの大学院に進もうと考えるようになりました。
研究分野
人間探求コース(行動科学)を選んだ当時は言語について勉強する・研究するということは考えておらず、言語学ということがあることも知りませんでしたが、行動科学をはじめ、学部でのさまざまな授業を通して学問として追究したいと思うようになりました。いったんは東京大学に進学しましたが、その後、奨学金付きで修士課程に受け入れてくれることが決まったピッツバーグ大学に進学しました。
私の研究は一般的に「言語習得」と呼ばれている分野です。人間は生まれた頃から(あるいはお母さんのお腹の中にいる頃から)自分のいる環境で話されている言語を学び、通常、小学校に上がるまでには(読み書きはまだでも)一人前に自分の母語が話せるようになります。この過程自体は人類共通・世界共通ですが、最終的にできあがったものは、言語によってパターンも文法も違いますし、同じ言語でも個人や環境によっても変わります。複数の言語を同時に学ぶこともあります。成長してから外国語を学ぶこともあります。一度習った言語を忘れてしまうこともあります。
いろいろなシナリオを見ながら、言語のどこまでが「人類共通」と言えるのか、という点に興味があります。この質問自体は、社会的な意義というよりも、種としての人間について言語はどういう存在か、という本質に迫った質問になると思います。
後進へのアドバイス
飛び入学(先進科学プログラム)は、熱心な学生や先生方に囲まれて勉強することができる、とても魅力的な場所です。先生方はあなたの将来について真剣に考えてくれ、協力してくれます。私もまずは「トライしてみよう」というところから始まりました。少しでも興味があるなら、受験してみることをおすすめします。きっと新しい扉が開かれると思います。