教育
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オムニバスセミナー 2023(R5)

開催日

2024/1/5(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 小山 佳一 氏 (鹿児島大学理学部長)
講演題目

物理学者はクレーンゲームを攻略できたか?―学校で習わない物理の楽しみ方―

要旨

 物理学は、私たちが存在するこの宇宙の仕組みと解き明かし、利用・応用する学問ですので、教科書や専門書、学術論文の中だけ学問ではありません。物理は、身の回りに起こる現象そのものです。ならば、クレーンゲームで、物理的にプライズ(景品)をゲット(獲得)することも、物理で説明できることになります。プライズゲットだけを目的にするよりも、クレーンゲームのアームでプライズを掴み、あるいは引っ掛け、落とし口に運び、ゲットする過程も物理学で考えると、ゲームはより面白くなると思います。

 例えば、プライズの動きの基本は、重心の並進運動と重心まわりの回転運動と見ることができます。また、プライズの位置エネルギーは、プライズの取り出し口の高さのときが最も低いです。重力はプライズに対して必ず位置エネルギーが減少する向きに作用します。この物理に対して、お店側は、ゴムなどの静止摩擦係数や動摩擦係数の大きい物体を仕掛け、抗力がプライズの移動を邪魔するように設定し、ときにはアームからプライズに作用する力を弱め、プレイヤーがプライズゲットに向けた位置エネルギーを下げる操作の難易度を上げています。一方、プレイヤーから見れば、クレーンゲームはプライズに作用する力を操作し、重力やときには撃力も最大限に利用して、プライズの位置エネルギーを下げていくゲームに見えます。いかに効率よく下げるか?そこに物理学の知識が役立ちます。

 本講演では、はじめに、鹿児島大学の文系・理系1年生向け授業「教養の物理学入門」の中で、紹介する「クレーンゲームに関わる物理」のトピックスを主に紹介します。次に、私の専門の強磁場材料科学の最新の研究紹介をします。そして、私の経歴・経験から、研究者を目指すのに必要な考え方などを、若い学生のみなさんにお伝えしたいと思います。

会場 物理会議室(理学部2号館3階)
開催日

2023/12/15(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 鈴木 雅子 氏 (テキサスA&M大学栄養学部 Assistant Professor)
講演題目

栄養と遺伝情報と病気の関わり

要旨

 栄養のバランスの良い食事を心がけていますか?
 私たちの身体は食べたものによって作られています。私たちの身体にある細胞や組織がそれぞれの役割を果たすためには、適切な栄養を食事から偏りなく摂ることが重要です。栄養素の欠乏や過剰摂取は、赤ちゃんからお年寄りまで、さまざまな病気を引き起こすことが知られています。また、私たちが持つ遺伝情報には個人差があり、この遺伝情報の違い(遺伝子多型)が食事からの栄養素の取り込みや体内において活性作用を発揮する栄養素の量に影響を及ぼします。言い換えれば、栄養素の摂取量と私たち一人ひとりが持つ遺伝子多型が相互に作用しあって、栄養不足や過剰が原因となる病気のなりやすさや発症が決定されます。
 それでは、食事から栄養を摂らない生まれる前(胎児期)の栄養状態はどうでしょうか?胎児期は母親の子宮内で器官・組織を発達させている期間で、胎児期の栄養状態は正常な発達にとても重要です。この時期は胎盤を介して(哺乳類の場合)母親から栄養を得ており、母親の極端な栄養素の過不足は死産、奇形や先天異常の原因となります。さらに、出生時に問題がなくても、母親の栄養素の過不足は胎児の将来の病気のかかりやすさに影響をすることが知られています。しかし、出生前の栄養状態を私たちの体がどのように記憶しているのかは不明で、私たちの研究室ではその長期記憶メカニズムについて研究しています。
 本セミナーでは、胎児期の栄養状態と遺伝情報が成長後の病気のなりやすさに与える影響について最新の知見を交えながらご紹介したいと思います。

 米国テキサス州にある州立大学(テキサスA&M大学)で大学教員をしています。生まれも育ちも日本です。博士課程取得後に渡米しましたが、米国でも大学院を修了しています。日本とアメリカの大学の違いや海外で働くことについてもお話ししたいと思います。

会場 物理会議室(理学部2号館3階)
開催日

2023/12/1(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 西野 雅人 氏 (千葉市埋蔵文化財調査センター 所長)
講演題目

縄文貝塚と千葉の海・山-遺跡からみえる地域の魅力とその活用-

要旨

 県・市町村職員の立場で考古学研究をしています。専門は縄文時代です。大学1年のときにアルバイトで参加した貝塚の発掘を契機に、千葉の貝塚研究を40年続けています。行政内研究者であり、開発事業者との調整や発掘調査、成果の公表や活用なども仕事です。
 日本の歴史は、肉食を特徴とする旧石器人から始まりました。縄文時代には土鍋の利用が広がり、約7,000年前に多様な食材の利用がはじまります。究極の雑食動物へと大きく舵を切ったのです。約5,000年前、安定した食を手に入れた縄文人は、全国各地で定住をはじめ、やがて1,000年も続く持続可能な社会を実現します。千葉の貝塚はこうした縄文人の営みを象徴する貴重な人類遺産といえます。
 ところが、意外なことに、巨大な貝塚の貝は径2cm未満のイボキサゴが9割を占めています。腹を満たしえない小さな貝は、具材としてより、でんぷん質食材やキノコ、山菜などを使った鍋料理に塩分とうま味を加える調味料的な存在だったようです。巨大な貝塚は、地域の新鮮な食材とその持ち味を生かした鍋料理の完成によって生まれたモニュメントだったのです。
 イボキサゴは、東京湾に奇跡的に残る盤洲(ばんず)干潟の先端を埋めつくしています。とても美味しいのですが、ほとんど利用されていません。縄文人が愛したイボキサゴの魅力を知り、さまざまな食材を入手して「至高の縄文鍋」をつくろうというプロジェクトを進めています。
 以上のような研究成果と取り組みについてお話します。

会場 物理会議室(理学部2号館3階)
記録 講義ビデオ
開催日

2023/10/20(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 与良 正男 氏 (毎日新聞客員編集委員、NPO法人「ドット・ジェー・ピー」特別顧問)
講演題目

政治とマスコミ

要旨

 若い世代の「政治離れ」が指摘され始めて随分、時間が経ちました。政治への関心が低いのは若者だけではありません。最近は40代~50代にまで広がっています。その無関心を助長しているのが、新聞やテレビをはじめとするマスコミではないでしょうか。メディアの役割とは何か。新聞記者40年、うち政治記者30年の経験を踏まえて、みなさんといっしょに考えたいと思います。

会場 物理会議室(理学部2号館3階)
記録 講義ビデオ
開催日

2023/7/21(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 金澤 建彦 氏 (基礎生物学研究所 助教)
講演題目

植物のオルガネラ進化 ~オルガネラ獲得への道程~

要旨

 真核生物の細胞内には,複数の脂質二重膜で囲まれたオルガネラ(ミトコンドリアや葉緑体)と一枚の脂質二重膜で囲まれたオルガネラが存在する。前者は,現生のバクテリアの祖先が真核細胞に共生することで生じたと考えられている。一方後者には小胞体やゴルジ体,エンドソーム,リソソーム/液胞などがあり,これらは細胞膜を起源として,真核細胞の進化の過程で独立の区画(内膜系オルガネラ)としてはたらくようになったものだと考えられている。
 それぞれの内膜系オルガネラは,機能発現に必要なさまざまなタンパク質や膜脂質の独自のセットを有し,細胞分化や発生,環境応答などにおいて機能している。これらの物質の正しい局在化や輸送は,膜で囲まれた小胞や細管などの輸送中間体を介した物質輸送の仕組みである「膜交通」により実現されている。真核生物には,ほぼすべての種に共通する内膜系オルガネラ(小胞体,ゴルジ体,リソソーム/液胞など)に加え,進化の過程で独自の内膜系オルガネラを発達させた系統が存在する。新しいオルガネラの誕生と,そのオルガネラと既存のオルガネラを結ぶ新しい膜交通経路の開拓はどのように起こったのだろうか?
 苔類独自のオルガネラ「油体」の研究から観えてきた,系統独自のオルガネラ獲得とそこへの輸送経路開拓のメカニズムについて紹介する。
 また,千葉大学園芸学部応用生命化学科を卒業後,現在の研究テーマと出会うまで道程についても併せて紹介したいと思います。

会場 物理会議室(理学部2号館3階)
記録 講義ビデオ
開催日

2023/7/7(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 鈴木 俊貴 氏 (東京大学先端科学技術研究センター 准教授)
講演題目

シジュウカラの言語能力と動物言語学の挑戦

要旨

 アリストテレスの時代から、「言語」はヒトとその他の動物を大きく隔てる性質であると考えられてきました。私たち人間は、単語を用いて物事を示したり、それらを組み合わせて文章をつくり会話しますが、動物の鳴き声は単なる感情の表れにすぎないと捉えられてきたのです。しかし、この二分は本当に正しいのでしょうか?たしかに、感情を伝える音声だけでもうまく意思疎通がとれる動物もいるでしょうが、研究者たちは動物たちのコミュニケーションをどれほど詳細に解明できているのでしょうか?私は、この疑問を胸に、シジュウカラの鳴き声について研究を続けてきました。
 シジュウカラは都市部から山地まで広く見られる私たちに身近な野鳥です。15年以上にわたる野外研究の成果として、シジュウカラは 捕食者の種類を示したり仲間を集めたりするための様々な鳴き声をもつことがわかってきました。さらに、彼らはこれらの鳴き声を組み合わせ、より複雑なメッセージ作ることまでできるのです。
 さらに、野外において認知実験をおこなうことで、聞き手のシジュウカラは、鳴き声の示す対象をイメージしたり、音列に文法のルール を当てはめることで情報を読み解いていることもわかってきました。これらの発見は、私たちが普段会話のなかで使っている認知能力を動物において初めて実証した成果であり、言語の進化に迫る上でも大きな糸口を与えるはずです。
 本講演では、上記の研究内容を紹介しながら、野外観察や行動実験から動物たちの豊かな会話の世界にどのように迫れるのか、その新たな学問の枠組み(動物言語学)についてもご紹介したいと思います。

会場 物理会議室(理学部2号館3階)
開催日

2023/6/16(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 村上 千明 氏 (千葉大学国際高等研究基幹 特任助教)
講演題目

千葉大学での脂質生化学研究–「純・千葉県産博士」の誕生から海外出荷まで

要旨

 小生は生まれも育ちも千葉県。幼稚園から大学院まで千葉県で教育を受けた「純・千葉県産博士」である。先生というより、むしろ先輩(千葉大学OB)である。
 実は、若い時は将来の夢が見つからず、「プロフェッショナルになれば、人生が拓く」という予備校時代の講師のアドバイスを愚直に実践しようと、最も難しい進路の1つを選択した。学部4年次に研究を始めてから8年、博士号を取得して2年。駆け出しの研究者だが、朧げながら自分の目指しているものを捉えつつある。
 本セミナーでは学生時代からの研究「半世紀以上分子実体(遺伝子)不明の脂質代謝酵素の探索と機能解析」に関して、本学での経験を交えながら紹介し、「千葉大学では何ができ、将来どのように生きるのか?」について考える場を提供したい。

会場 物理会議室(理学部2号館3階)
記録 講義ビデオ
開催日

2023/4/28(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 豊田 正嗣 氏 (埼玉大学大学院理工学研究科 教授)
講演題目

物理学から神経科学そして植物学へ ―異分野融合から見えてきた新しい生命観―

要旨

 小さい頃は生き物にあまり興味がなく、将来の夢は物理学者になることでした。大学では物理学科に進学したのですが、あることがきっかけで脳に興味をもち、神経科学の道に進みました。このまま神経科学者になるのかと思いきや、現在は植物の研究をしています。
 このように分野を大きく変えながら、研究を続けてきた科学者は、珍しいかもしれません。しかし、「自分が、本当に好きなものは何なのか」「興味をもてるものは何なのか」といった人生の方向性を決めることは、そう簡単なことではありません。「本当に好きなものを見つけた」と思っても、明日には変わっていることもあるからです。
 本セミナーの前半では、「日米を渡り歩きながら、様々な研究分野に携わってきた」少し変わった科学者の話をしたいと思います。後半では、この科学者が現在、夢中になっている植物の最先端の話をします。「脳や神経をもたない植物は、どのような仕組みを用いて傷つけられたことを感じて、その情報を瞬時に全身に伝えているのか」「オジギソウやハエトリソウはどのような仕組みで高速に葉を動かすのか」などについて、最新のイメージング技術で映し出された植物のダイナミックな動画と共に紹介します。

会場 物理会議室(理学部2号館3階)

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