教育
Education

オムニバスセミナー 2019(R1)

開催日

2020/1/10(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 光本 歩 (特定非営利活動法人ウィーズ 理事長)
講演題目

家庭不和がもたらす社会的問題

要旨

生まれたばかりの子どもが最初に所属する組織が「家庭」である。家庭の抱えた課題が子どもに与える影響は非常に大きい。子どもが成長し社会に出ていく過程においても、育った家庭環境は良くも悪くもついてまわるものである。 凶悪犯罪が起きた際、「犯人の両親は、犯人が〇歳の時に離婚をしている」などと報じられることが多いのも、家庭環境が個人の生き方や考え方に大きく作用していることを社会が認識していることの表れである。 本講義では被害者支援という対処支援のみならず、その問題の根本原因に着目する必要性についてお伝えしたい。

会場 先進科学センター会議室(理学部2号館2階)
開催日

2019/11/15(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 加藤英明 (東京大学 大学院総合文化研究科 先進科学研究機構)
講演題目

タンパク質を視る 識る 創る

要旨

我々ヒトは約2万種類の遺伝子を持っており、それぞれの遺伝子が異なるタンパク質へと翻訳される。これらのタンパク質は、そのそれぞれが食べ物を分解したり、外界の光を捉えたり、我々の遺伝子を正確に2倍に複製したり・・・と驚くほど多様な機能を発揮することで、我々の生命活動を維持している。しかし、一方でタンパク質とは化学的にみると20種類のアミノ酸が数珠繋ぎになっただけの比較的単純な物質であるとも言える。では、我々のタンパク質はどのようにしてこれだけ多彩な機能を発揮することができるのであろうか。その理由は、タンパク質が(数珠つなぎになった鎖のままではなく)そのアミノ酸配列によって複雑な3次構造へと折り畳まれて機能を発揮するためである。そこで本講義では、これらの非常に小さなタンパク質がもつ複雑な構造を(1)どのようにしたら視ることができるのか、(2)またタンパク質を視ることによってどのようなことを識ることが出来るのか、(3)そしてその構造情報を用いて一体どのようなものを創ることが出来るのか、最前線で行われている研究の実例を交えながら紹介したい。

会場 先進科学センター会議室(理学部2号館2階)
開催日

2019/11/8(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 田谷 修一郎 (慶應義塾大学法学部)
講演題目

見ることの心理学:実験を通して知る視知覚とこころの関係

要旨

心理学者が見ること(視覚)の研究をしているというと不思議に思う人が多いようです。これはおそらく視覚が目に関する生理学的な働きだけで成立するものだと多くの人が考えているためでしょう。しかしそれは正しくありません。目が見ることの入り口であることは確かですが,それ以上に私達のこころの働きが世界の見え方を決めているのです。…と,こうした説明をすると「なるほど<気分>や<性格>によってものの見え方が変わることはありそうだ。そうしたことを心理学では研究しているのだな」と早合点されることも多いのですが,(こうした事柄も確かに心理学の問題ではあり得るものの),視覚の心理学はもっと大きな問題,つまり,目に映った光の列から,どのように(今現在,この文章を読んでいるまさにこの瞬間にもみなさんが体験している)「見る」という経験が生み出されているのか,ということを明らかにすることを目的とします。本セミナーでは,見えている世界とは私達のこころが作り上げた世界についての或る種の仮説である,ということをデモンストレーションを交えながら示し,なぜ視覚のメカニズムを研究する上でこころの働きを考えることが不可欠なのか理解していただくことを目指します。

会場 先進科学センター会議室(理学部2号館2階)
開催日

2019/7/19(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 川島 武士 (国立遺伝学研究所、DDBJ、総合研究大学院大学)
講演題目

オープンサイエンスの代表例DDBJの一員として動物のゲノムを比較解析

要旨

ゲノムの塩基配列を解析して主要科学誌に掲載するには、公的なデータベースに配列データを登録しておくことが義務付けられています。これは一度解読されたDNA塩基配列を、世界中の人が自由に再利用できるようにという、科学者コミュニティーが作ってきた合意事項です。国際的に認められた配列データの登録先は世界に三箇所あり、国立遺伝学研究所の運営するDNA Databank of Japan (DDBJ)と呼ばれるデータベースセンターは、その一つに位置付けられています。他の二つは米国のGenBank、欧州のENUで、この三つの間でデータを相互共有する取り決めは、国際塩基配列データベース共同研究(INSDC)と呼ばれています。最近はオープンサイエンスと呼ばれる流れがあり、科学者の生み出すデータを公開して広く再利用することが求められるようになってきていますが、INSDCによる塩基配列の維持管理とその公開に関する活動は、オープンサイエンスの成功例の一つとして評価されています。私はこれまで、多様な動物のありようを知りたいという興味に引っ張られて、ずっと楽しく研究をしてきました。現在はこのDDBJのスタッフの一員として、様々な生物の配列データを縦横無尽に比較して研究する楽しい日々を送っています。研究対象は億年単位の生物進化、研究生活は一年単位の職場変更。今時のアカデミアの現場の一例をお話しします。

会場 マルチメディア講義室2(理学部4号館2階)
開催日

2019/7/12(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 森川 一也 (筑波大学 医学医療系 感染生物学(細菌学)教室 教授)
講演題目

薬剤耐性菌対策と基礎研究

要旨

薬剤耐性菌対策(AMR対策)はWHOをはじめとする各組織、各国がアクションプランを策定して取り組んでいる世界的な課題です。特に東南アジア諸国では一般の抗生物質は処方箋を必要としないOTC薬で、家畜等への使用も盛んであり、耐性菌(耐性遺伝子)が家畜、食肉、ヒトなどを介して世界各国に拡散することも問題です。本講義では、耐性菌の検査、現状、耐性菌出現メカニズムなどを概説します。当研究室で行われている病原細菌の基礎研究についても紹介する予定です。また講師は大学を飛び級した経験があることで本講義にお誘いいただきました。高校を飛び級した皆さんに参考になるかどうかわかりませんが、それについても少しお話しようと思います。

会場 先進科学センター会議室(理学部2号館2階)
開催日

2019/7/5(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 岡本 卓 (SENSY株式会社取締役CRO、SENSY人工知能研究所(SAILS)所長)
講演題目

AI技術概論とスタートアップ企業に飛び出した研究者のキャリア

要旨

現在のAIブームは、第3次AIブームとよばれ、FAMGA (Facebook, Apple,Microsoft, Google, Amazon) が中心となって、ディープラーニング技術をはじめとするAI技術の事業応用の可能性を示したこと、学習に用いるビッグデータが容易に収集できるようになったこと、クラウドコンピューティング環境の充実、AI技術を実装、運用するためのソフトウェアとサービスの整備を背景として、いわゆるコモディティ化が進んでおり、AI技術を容易に事業に取り込むことが可能となり、その応用範囲は拡大の一途をたどり続けている。

 

現在のAIで用いられているアルゴリズムとその考え方の本質は、関数近似と最適化(関数の最小化)であり、初等関数、微分学、線形代数など、概ね高等学校で学ぶ数学と、一部、大学1年生で学ぶ数学の知識があれば十分に理解できるものである。本講義では、今まさに、様々な分野で先端技術として応用が始まっているAI技術の概論と、その実装・運用技術の実際について簡単に解説する。また、講師は、大学教員からスタートアップ企業に転職した経験を持っているが、そのキャリアについても時間がある限りお話したい。

会場 先進科学センター会議室(理学部2号館2階)
開催日

2019/6/28(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 Matthias Warschinke (千葉大学 先進科学センター 特任助教)
講演題目

Of colored particles and confinement

要旨

Particle physics has come a long way since ancient Greece and Leucippus' idea of atoms being solid "uncuttable" objects. After gradually revealing the sub-structure of the atoms in the early 1900s, it finally turned out that even the nucleons like proton and neutron are not elementary, but consist of even smaller entities, the so-called quarks. The quarks are bound together by gluons, the carriers of the strong force. Beside peculiar properties like fractional electric charge, the quarks also carry what has been labelled “color charge". In nature, the quarks are only found in “colorless” or “white” bound states. This phenomenon is known as quark confinement and is yet to be explained theoretically.

 

In this seminar I want to give an introduction to the theory behind the quarks and gluons, Quantum chromodynamics (QCD). Since QCD is a very complicated quantum field theory, I do not focus on mathematical details, but I wish to motivate key concepts and ideas that are important when dealing with a quantum field theory. I then introduce a promising model through which people try to understand quark confinement, the dual superconductivity, and discuss issues regarding the applicability of this picture towards QCD.

会場 先進科学センター会議室(理学部2号館2階)
開催日

2019/4/26(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 神田 展行 (大阪市立大学 大学院理学研究科 教授)
講演題目

極限技術で宇宙を探る重力波観測~”時空”がこんなに硬いとは!~

要旨

「重力波」とは、アインシュタインが一般相対性理論で1905年に予言した時空のゆがみの波です。重力波が実際に人類によって測定されたのは、予言から実に100年後の2015年でした。時空自体を測る、しかも極々小さな波である故に、現代の極限的な技術を必要としたのです。初めて観測された重力波は、太陽の30倍も重いブラックホール連星の合体から放射されたという驚くべきものでした。こうした高密度・高エネルギーの天体現象から発する重力波は大変なエネルギーなのですが、なにしろ私たちの住まう時空はとても硬いのです。そして、重力波の持つ様々な情報 ―放射源である天体の運動、強い重力場の性質など― は、重力の研究や宇宙像に新しい知見をもたらそうとしています。本セミナーでは、重力波観測に至るまでの歴史、技術を紹介します。そして重力波天文学・宇宙物理学、重力波物理学といった面についての展望を議論します。

会場 物理会議室(理学部2号館3階308号室)
開催日

2019/4/19(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 樋口 哲夫 (日本電子株式会社)
講演題目

質量分析の面白さと今後の広がり

要旨

質量分析装置は、NMR(核磁気共鳴装置)、赤外分光計とともに、有機化学の分析における「三種の神器」と呼ばれています。その特徴は、分析対象物質の分子量、また構造情報が得られることです。それにも増して魅力的なのがその感度です。質量分析が環境分析で要求される極微量の有害物質定量に広く利用されているのは周知の事実です。材料分野においても微量成分の分析に威力を発揮しています。さらに、各種の前処理装置と組合せることにより、興味深い情報を得ることが可能になってきました。 本講義では、製品開発の面白さと、今後の更なる可能性について述べたいと思います。 

会場 理学部1号棟1階 大会議室
開催日

2019/4/12(金)

時間帯 16:10-17:40
講師 Norbert Koch (フンボルト大学 物理学部 教授)
講演題目

Natural sciences contribute to resolving global challenges:What can the individual scientist do?

要旨

Sustainable development of our global society needs answers to decisive questions that move people today and in the future. To that end, governments around the globe have defined the key topics that need attention: a secure and reliable food and energy supply, sustainable use of resources, as well as future means of mobility, health, and information technologies. Since the grand challenges associated with finding solutions for tomorrow cannot be adequately addressed by one country only, international cooperation is a matter of course. The natural sciences, foremost physics and chemistry, contribute by providing fundamental knowledge for the development of technologies that are needed to support the above topical fields. But the individual scientist can provide more than just excellent research and disciplinary education, she/he can build bridges on a political scale, e.g., between countries whose governments are not (yet) ready to interact amiably. Pertinent examples are discussed. Beyond this, large scale scientific infrastructures such as synchrotron radiation sources act as internationally integrating structures. Finally, possible ways to identify one's own research field of relevance for global challenges will be discussed.

会場 先進科学センター会議室(理学部2号館2階)

過去のオムニバスセミナー

▲ PAGE TOP