求人検索サイトのアルゴリズムを最適化して、誰もが生きやすい社会を作る

  • 大杉 直也さん

    株式会社リクルート
    検索ソリューショングループ/グループマネジャー

プロフィール

2005年、人間探究コースに飛び入学。2009年、奈良先端科学技術大学院大学情報科学科(博士前期課程、理学修士)に入学、2011年東京大学大学院総合文化研究科(博士後期課程、単位取得満期退学)。2014年株式会社リクルートホールディングス(現、リクルート)に入社し、現在に至る。

なぜ、「飛び入学」に?

高校での勉強はどうしても大学受験をゴールとして考えがち。もっと本質的なこと、興味関心が持てることに取り組みたいという思いから、飛び入学に挑戦しました。

先進科学プログラムについて

入学して感じたのは、優秀な仲間たちとの議論の楽しさ。理学部や工学部などの学生と一緒に、物理も数学も哲学も好きなだけ時間をかけて学びを広げていくことができました。また、大学の先生方の「研究の姿勢」にも刺激を受けました。大学での「研究」というのは、答えがわからないからやるもの。当時指導していただいた先生は、「どうやったらこの研究は成立するのか」「この答えは本当に正しいのか」と常に悩んでいて、その姿から「研究とはいかにあるべきか」を学びました。

今になって強く感じるのは、学部時代の広い学びがとても貴重だということ。知識を広げていく中で、自分が進みたい分野が見えてきます。私の場合は、人間の行動に興味があって「人間探究コース」を選んだのですが、人間の行動を理解するには、情報工学や統計学の必要性を感じるようになり、大学院は、奈良先端科学技術大学院大学の情報科学科へ進みました。修士号取得後、東京大学大学院総合文化研究科の博士課程では機械学習について研究を重ねました。博士課程を修了する時点で、統計学や機械学習を研究する道に進もうと決めていたのですが、そのために、実社会に直接接しながら、研究対象となるデータを方墳に扱える情報産業で働くこと方が、自分には適していると考え、民間企業への就職を決めました。

現在の仕事は?

現在は、情報検索サイトのアルゴリズムを開発する仕事をしています。めざしているのは、多くの人がもっと幸せに生きていける社会を実現すること。衣食住が高いレベルで満たされつつあるのに対し、「好きなこと」「やりたいこと」を生業としている人は少ないように感じます。新しい働き方なのか、新しい仕事の在り方なのかわかりませんが、求人情報の検索サイトには、その可能性を探るための情報が無限にあります。「こういう問いを立てたら、こういう結果が出るはず」という仮説をもとにアルゴリズムを組み立て、システムを開発している仕事は、大学時代に学んだ行動科学の研究のプロセスそのものです。こういった科学的な課題解決のスキルは、今日のビジネスの世界では欠かせないものになっています。仕事をする中で新しい知見が必要になれば、また大学で学ぶこともあるでしょうし、逆に、ビジネスの現場で得た知見を教育や研究の場に還元する機会もあるはずだと考えています。

後進へのアドバイス

高校生活にはいろいろな意味があると思います。部活、文化祭、修学旅行など、高校生活そのものに意義を感じる人もいるでしょう。一方、学問的に見ると、数学はこの範囲、物理はここまで、と履修範囲が制限されて学問の本質にとどかないことが多い。そのうえ、大学受験という仮のゴールに向けた受験勉強も必要となります。私はその中途半端さから抜け出したくて「飛び入学」を選びました。好きなことを思う存分学びたいなら、「飛び入学」に挑戦しない理由はない! と私は思います。

(2021年7月現在)